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Captain America by Waid & Samnee: Home of the Brave

Captain America by Waid & Samnee: Home of the Brave (Captain America by Mark Waid (2017))

世界にいったん平和が訪れ、これを機にアメリカ全土を巡る旅に出ることを決意したキャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャース。旅先でランパートと名乗る組織と闘うことになったキャップは彼らの謎を追うが、やがて巨大な陰謀の存在を知ることになる。

最近コミックショップで適当に本をあさってたら面白そうなコミックに出会ったので、地味に当ブログで初めてなキャプテン・アメリカのコミックを紹介したい。ライターはAvengers: No SurrenderやHistory of the Marvel Universeを手掛けたMark Waidで、アーティストはこれまでDaredevilやBlack WidowなどでWaidと何度も手を組んできたChris Samnee。このコンビの作品を読むのは実は初めてだから結構楽しみだったんだけど、Waidのライティングの明るさとSamneeの描く優しい表情が見事にはまっててすごくよかった。

以前読んだ作品でも感じたけど、やっぱりWaidのライティングはすごく王道というか、設定に複雑なてこ入れをするというかはキャラクターのイメージをそのまま活かして明るい話を書く印象がある。No SurrenderやNo Road Homeもアベンジャーズが一致団結して闘う巨悪と闘うすっきりした話だったし、History of the Marvel Universeも構成自体は複雑なものの、最後は明るいメッセージできれいに物語を占めてくれた。本作では話自体はずっと明るいわけではないけど、それでもやっぱりどこか明るいキャプテン・アメリカを見せてくれるところがWaidのキャラクターの扱い方の面白いところだと思う。

Samneeは今や超売れっ子アーティストだけど、アメコミではあまり見かけない画風の絵を描く人だと思う。あの線とべた塗が醸し出すどこか優しい雰囲気はこの作品はスティーブ・ロジャースのイメージにピッタリだった。アクションシーンの構図もメリハリが効いてかっこいいし、本当に死角がない素晴らしいアーティストだ。

本作が始まる以前Captain America誌はNick Spencerがライターを務めており、直前までイベントのSecret Empireを展開していた。自分は読んでいないから個人の感想はないけど、キャップがヒドラの一員だったというショッキングな展開は当時コミック界隈でかなりの波紋を呼んでいたことはよく覚えている。そんな賛否が割れる暗めの展開があったからなのか、その後に始まった本作は特にSecret Empireの影響に触れることなく、とてもクラシックな、みんなの知っている明るいキャップという感じの物語になっている。

この本には#695から#700までが収録されている。一応シリーズは#704まで続いていて本作の続きはPromised Landという題でまとめられているんだけど、Vol. 1とVol. 2の表記がないことからもわかるように全くつながりはない。それどころかPromised Landは未来の物語で主人公はキャップですらないから無理に読む必要はないかな。話が短めなのもあってそんなに面白くもなかったからそっちは多分紹介しないと思う。

キャプテン・アメリカって名前だけ聞くと結構よくわからないキャラクターだな、と改めて思う。アメリカを守るヒーローといったって、そもそもアメリカの何を何から守るんだ、と考えるといまいちよくわからないというか、自分がキャップのコミックをあまり読んでないからかもしれないけど、実感がわかないキャラクターだなと思う。本作はそんなキャップにまずアメリカ横断という課題を与えることで、うまくそこを描いていると思う。

最初に書いたように、本作のキャップはとても王道で明るいキャラクターだ。そのクラシックなヒーロー像をアメリカの様々な場所で見せつけながら人々を救っていく。改めてアメリカの名を背負うヒーローの偉大さ、カッコよさが身に染みるんじゃないかな。自分は特に冒頭の#695のエピソードが大好きだ。今や伝説となったキャプテン・アメリカも、スティーブ・ロジャースが守ってきた強いものが弱いものを守るという単純ながらヒロイックなルールに沿って動いてきた結果なのだ。一人の小さな正義感が巨大なシンボルとなって伝説となる、キャップのカッコよさが詰まった一編なんじゃないかな。

#698からは一気に毛色が変わって、現代で氷漬けにされて未来で再び復活したキャップがディストピアで闘う物語になる。これまでアメリカで様々な人に出会ってきたキャップが差別主義の独裁国家となった未来のアメリカ政府と闘うというのはすごく説得力があった。キャップが仕えるのは政府そのものではなくアメリカの掲げる理想だとはよく言うけど、改めて民主主義のために闘うキャップを見せてくれる物語になっていると思う。

まさに王道で誰でも踏み込める物語なので万人におすすめできる作品だが、特にSamneeの絵に惹かれた人には是非読んでほしい。独特の雰囲気で描かれた力強く優しさがあふれるキャップは必見だ。

 

Captain America by Waid & Samnee: Home of the Brave (Captain America by Mark Waid (2017))

Captain America by Waid & Samnee: Home of the Brave (Captain America by Mark Waid (2017))

  • 作者:Waid, Mark
  • 発売日: 2018/06/19
  • メディア: ペーパーバック