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Tales of Suspense: Hawkeye & The Winter Soldier

Tales of Suspense: Hawkeye & The Winter Soldier (Tales of Suspense (2017-2018)) (English Edition)

Secret Empireで悪のキャプテン・アメリカに殺されたブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフ。しかしその後立て続けに起きる元ヒドラ幹部の連続暗殺事件をきっかけに彼女の元同僚だったホークアイはナターシャの生存を確信し、彼女を追って殺戮を止める旅に出る。次のターゲットになるであろうヒドラ幹部の張り込みを開始したホークアイはそこに現れた怪しい長髪の人物の影を追うが、その正体はナターシャではなく彼女の元恋人、ウィンター・ソルジャーことバッキー・バーンズだった。

近年Marvelで頭角を現しUncanny X-MenやThe Punisherなんかの有名タイトルも手掛けるまでになったMatthew Rosenbergがライター、現在Black Catを担当しているTravel Foremanがアーティストをそれぞれ担当している本作は位置づけとしてはヒドラのリーダーになったキャプテン・アメリカが世界征服を狙うSecret Empireというイベントの後日談になっている。自分はイベント自体は全く読んでいないのでそっちの内容はさっぱりなんだけど、ブラック・ウィドウが死んでいたこともびっくりだし、そのあと速攻生き返ってたことにもびっくりだ。ヒーローたちがドラゴンボール並みの頻度で死んでは生き返るマーベル・ユニバースだけど、その中でもこれは最速記録なんじゃないか。

RosembergもForemanもあまりなじみのない作家なんだけど、現在刊行中の同ライターによるHawkeye: Freefallが面白そうだったのと、本作自体も評価がすごく高かったから手に取ってみた。実際読んでみてもスピーディーに進みながら細かいミステリーも展開させるストーリーはすごく面白かったし、アートもよかった。特にバッキーやブラック・ウィドウの長い髪のなびき方がすごくかっこいいし、影の使い方も好きだな。

ホークアイ、ウィンター・ソルジャー、ブラック・ウィドウという登場キャラクターの並びからもわかるように本作はだいぶミステリーやスパイものっぽい雰囲気がするコミック。特に前半はナターシャを追う元カレ二人組の様子が描かれるけど、ここら辺のミステリーの配置がなんとも絶妙だ。ナターシャに一歩近づいたと思ったらふと手掛かりがなくなるという展開も続いてハラハラするし、一つの出来事が次の出来事へとどんどん続いていく様子も気持ちいい。何より最後のネタ晴らしがすごくきれいで、それまでの謎が一気に解かれるのがすごく面白い。この複雑ながら一気に解けるミステリーがこの作品最大の魅力だ。

あとはキャラクター同士のコミカルなやり取りも面白かった。展開自体は謎解きが詰め込まれてる関係でだいぶ濃いんだけど、その合間に挟まれるキャラクター同士の会話のおかげで物語全体はだいぶ軽い印象に変わる。特に割とくだらないことをずっと言っているホークアイと黙ってまじめに任務に取り組むバッキーのギャップがよく出る二人にやり取りはすごく面白かったし、突然現れた熊とそれに反応するほかのキャラクターなんていうのも笑った。さすがX-Menを任されるだけあってRosembergの展開とセリフ回しは面白い。これのおかげでまさに万人受けするというタイプの作品に仕上がっていると思う。

読みやすい作風に加えて登場するキャラクターも映画で注目している人も多いと思うし、ナターシャが死んでいるという予備知識さえあればこれからアメコミを読み始める人にもお勧めできる作品だと思う。キャラクター自体の魅力も会話劇でがっつり引き出されてるし、Marvelのヒーローを使った濃厚なミステリーが気になる人にも読んでほしい。

 

Tales of Suspense: Hawkeye & The Winter Soldier (Tales of Suspense (2017-2018)) (English Edition)

Tales of Suspense: Hawkeye & The Winter Soldier (Tales of Suspense (2017-2018)) (English Edition)