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Strange Academy: First Class

Strange Academy: First Class (Strange Academy (2020-)) (English Edition)

幼いころから魔法の力を使うことが出来た少女エミリー・ブライトは、とある事件から魔法を使うことの代償を学ぶと同時に、魔術師たちが創設した魔法学校ストレンジ・アカデミーに招待される。自身の力について学ぶためアカデミーへの入学を決めたエミリーは個性豊かな生徒たちとともに、マーベル・ユニバースの偉大な魔術師の下で授業を受けることになるが、学園にはまだ秘密があった。

前回がこのブログだと珍しい魔法関連のScarlet Witchの紹介だったから、今回は今魔法系で一番ホットなタイトルだと思うStrange Academyを紹介。Marvelの学園コミックといえばX-MENだけど、魔法学園というのはありそうでなかった設定。ハリー・ポッターやら呪術廻戦やら日本でも有名な作品が山ほどあるジャンルだけど、いかにMarvelらしさを演出するかにも注目だな。

ライターはSkottie Young。もともとはアーティストとして有名で、定期的に出るかわいいヴァリアントカバーはMarvelのコミックを読んでいる人なら一度は店頭で見たことがあるんじゃないかな。ライターとしては最近だとRocket RaccoonやDeadpoolを担当していたな。ただ、正直自分はあまり好きじゃない。というのも、自分がMarvelで一番好きなキャラクターはロケット・ラクーンなんだけど、Youngの書いたRocket Raccoon誌の内容は正直微妙だったんだよね。それだけならいいんだけど、のちにDeadpoolを担当したときにインタビューで、もともと昔からDeadpool誌を書きたかったけど当時は許可が下りなかったからRocket Raccoon誌でやりたかったことをやった、というような発言をしていて本当に嫌になっちゃった。ロケットとデッドプール、共通点はありつつも全く別のキャラクターだと思うんだけど、そこを一緒にされてコメディ一辺倒の話をされてもいい気分はしなかった。だから本作の話もあんまり期待してなかったんだけど、その中身については後述しよう。

アーティストはHumberto Ramos。デフォルメされたカートゥーン調の絵柄が特徴で、数年前のAmazing Spider-ManやChampionsを描いていたのが記憶に新しいかな。リアル調の絵とデフォルメ絵って好みが分かれると思うし自分もどちらかといえばリアルな絵が好きなんだけど、Ramosの絵はキャラクターの表情がわかりやすかったりアクションの構図に迫力があったりして結構お気に入りなアーティストだったりする。特に本作はいろんな種族のキャラクターが出てきてそれぞれがいろんなエフェクトの魔法を使ったりするから派手なページが多くて、彼の技が光るシーンがたくさん見れて楽しかった。

魔法学校というテーマだけならありふれてるけど、本作の一番の特徴はMarvelのコミックだっていうことだと思う。アベンジャーズスパイダーマンが飛び回るおなじみの世界を舞台に話を書くとなれば、当然生徒や教師もおなじみのキャラクターその人や彼らにかかわりがある人物が出てくる。アスガルド人や氷の巨人、中にはマーベル・ユニバース最強の悪の魔術師ドルマムゥの息子、ドイル・ドルマムゥなんて新キャラクターまで出てきて、Marvelだからこそ作れる物語という感じは十分に楽しかった。しかもウィアード・ワールド出身の生徒なんかもいて、今まであまり焦点の当たってなかった場所やキャラクターにもこのタイトルを気に注目が集まったら面白いと思う。

前述のX-MENに限らず、Young AvengersやAvengers Academy、最近ではChampionsなど、Marvelでも十代の子供たちを主人公にした青春ものはいつも一定の人気があるジャンルなので、長いことやっているとだんだん話の中でお約束が生まれてくる。仲の悪いルームメイトやなぜか重大なタイミングで大人に連絡しない子供たちみたいなお決まりの展開は本作でも健在。ここは割と直球な青春ものの雰囲気を感じさせてくれる。

特に恒例の展開といってもいい学園内恋愛は最高。主人公ポジションのエミリーにドイル・ドルマムゥが片思いしてるのがちらちらわかるんだけど、これがとにかくかわいいんだな。エミリーが行くとこどこにでもついていこうとしたり、照れると普段赤く燃えてる顔がピンクになったりするのがめっっっっっっっちゃくちゃかわいい。もう自分もおじさんだから高校生のあまあまな恋愛見るとニコニコが止まらなくなるよね。

こんな感じで基盤の雰囲気や設定はすごく面白かった本作だけど、肝心の物語本編はというとこれもまたなかなか面白い。まだ序盤だからキャラクター紹介がメインになりつつも、しっかり伏線も張られててなかなか面白くなりそう。最初から生徒が魔法を結構自由に使えるから普通に敵をボコっててちょっと見ごたえがなかったけど、ここら辺も後々しっかりからくりが出てきて一気に主人公の立場がぐらつく感じも好き。日常パートでキャラクターの好感度も上げつつ、話も大筋も動かしていくのはいいバランスで面白いし、これからの展開にも期待が持てる。もともとYoung作品はキャラクター性をデフォルメしすぎる風潮があったから既存キャラクターの作品だと人物像に違和感が出てくるんだけど、新キャラクターを使ったわちゃわちゃ学園物語ならいい感じに楽しい話になるよね。好きじゃなかったライターの意外な一面を見れたという意味でも読んで正解だった。

意外と掘り下げられることが少ない魔法系の話の新タイトルということもあって楽しみにはしていたけど、新キャラクターもいっぱい出てかつMarvelおなじみの要素が垣間見えるのも面白いから初心者の読者さんこそ楽しみやすい作品なんじゃないかな。Marvelもそこらへんはわかってるらしくて、いつものペーパーバックより一回り小さいサイズで少し安い本として売ってる。Marvel版ハリポタと聞いて少しでも心が躍る人はぜひ手に取ってみてほしい。

 

Strange Academy: First Class (Strange Academy (2020-)) (English Edition)