アメコミもぐもぐ

アメコミ好きの大学生が感想を書くブログです。

Daredevil by Chip Zdarsky Vol. 5: Truth/Dare

Daredevil by Chip Zdarsky Vol. 5

デアデビルが殺人の罪を認めて自首した。ヒーローが消え新たな脅威が現れたニューヨークで、残された人々は悪に立ち向かう方法、各々の正義を探して翻弄されていく。しかしそれでも、街はやはりデアデビルを必要としていた。

今回は以前から紹介してきたZdarskyのDaredevilの最新刊の紹介。かなり久々の更新になってしまったけれど、最近少し忙しかったのと、なんといってもずっとBendisのDaredevilのオムニバスを読んでるからなかなか記事が書けないんだよね。ほかのコミックも同時進行でちまちま読んでるからなんとか記事も書いていきたいけど、とにかくオムニバスが読み終わるまではなかなか更新頻度も下がってしまうかも。ついでにだけど、ここ最近の記事のデアデビル率の高さもちょっと気になるかな。いかんせん去年の今頃から自分がデアデビルにドはまりしてるせいで、どうしてもそうなっちゃうんだよなあ。個人が趣味で好きなこと書いてるブログだから許してくださいねとは思いつつ、やっぱりいろんなコミックの話もしたいからそこもうまく調節していきます。

前巻のVol. 4でデアデビルに復帰はしたものの、以前に犯した罪を償うために警察に自ら出頭したマット。本作はそんなマットが裁判を待つ間、自分がいなくなる街を支えるために奮闘する姿が描かれる。

まず思ったのは、このシリーズって地に足がついた社会派な話はしつつも、やっぱりマーベル・ユニバースだけあって設定背景は結構ファンタジーなんだな、ということ。というのも今回逮捕されたデアデビルだけど、周りの人に危害が及ぶという特例でマット・マードックとしてではなく、あくまでデアデビルとして逮捕されることになる。法廷でも刑務所でも一切マスクは脱がないし、中身が誰かも知らない状況で裁判をやってるの、なかなかシュールだよね。そんなの別人にコスチュームだけ着せれば簡単に偽装できるじゃんとかいろいろ突っ込みはあるけど、これまでもあり得ない人数の警官が寝返ってギャングの味方してたり、割とフィクションならではの描写もあったなと今になって改めて感じる。リアルじゃないと否定的に思う人もいるかもしれないけど、現実のルールとヒーロー世界のルールをうまく照らし合わせて、フィクションとしての派手さやご都合はしっかりかなえつつ、現実にも当てはまるようなメッセージを物語に込めているという意味ではこれも一つの手腕だと思うな。

自分がいない間ヘルズ・キッチンに危険が及ばないようあの手この手を尽くすマットだけど、ここのあたふた具合もデアデビルらしくて面白かった。前巻と今回のラストがなかなか大きな展開だったからその間の小休止的な役割が強いんだろうけど、しっかりやるべきことはやりつつ伏線も張ってるのがよくわかる。ストロムウィン家の脅威が迫る中で今マットが一番やらなければならないことは街の土地を彼らの買収から守ることで、そのために大富豪のアイアンマンに掛け合ったりと、話が地味にならないようにしながら納得のいく展開をしているのはさすがのライティング。ここの二人の会話もなかなか深くて、富裕層のトップにいながら宇宙規模の敵とやりあっているアイアンマンと、普通の市民の目線で犯罪と闘うデアデビルの視点の違いがよく出ていると思う。

ただ、本作で一番の注目ポイントは間違いなくラスト。再びマットの前に現れたエレクトラが彼の後を継ぎ、デアデビルとなるシーンだ。マットが獄中にいる間もなんとかマットを支えて彼の協力を得たいエレクトラと、自分を裏切り人を殺す彼女を信用しないマット。キャラクターの歴史の中で常に微妙にすれ違ってきた二人だけど、そんなエレクトラが偶然出会った街のホームレスの女性から、かつて自分を助けてくれた弁護士の話を聞いて心を決める。死んだ夫の保険金を払わなかった企業と闘うために、無料で自分を助けてくれた弁護士がいたこと。そんな彼でも、企業が雇った弁護士の軍団にはかなわなかったこと。そして敗訴の後も、彼は女性に大金を援助し、聖書の言葉を引用してあきらめるなと励ましたこと。そんな言葉を聞いてエレクトラは街にやさしさと力を兼ね備えた存在が必要だと気付かされ、マットの仕事を引き継ぐ。たった二ページの、しかもデアデビル本人は登場していないシーンで、法だけでは救えない人々がいること、そんな人たちを守るためにやさしさが必要なこと、その二つを両立するのがデアデビルだったのだとまとめるこのシーン、本当にいい場面だった。もしかしたら今までのDaredevilのコミックで一番好きかもしれない。これまでZdarskyが描いてきたものを、エレクトラが学ぶという形で再び読者に訴えかける名シーンだ。

そもそもエレクトラというキャラクターが、マットと同じく父を亡くして社会の闇に気づくというオリジンを持ちながら彼とは正反対の方向に堕ちてしまったという背景の人物だし、Frank Millerはそんな彼女をデアデビルが必死に救おうとする闘いを描いてきたけど、そんな彼女が数十年越しでついにマットの目指した目標のために彼と同じ道に進むというのもすごくエモい。ついに彼女の魂が救われたんだなと思う一方、逆にデアデビルを継げるのはやっぱりエレクトラだけとも思うな。

もうこのシリーズも五巻だけど、風呂敷をたたむどころかもっと話が広がって展開が読めなくなってきているのがすごい。今自分の中で一番面白いシリーズなだけあって、本当に期待を裏切らない作品だ。次はKing in Blackのクロスオーバーもあり、エレクトラの活躍ももっと見れると思うので今から待ちきれないな。

 

Daredevil by Chip Zdarsky Vol. 5

Daredevil by Chip Zdarsky Vol. 5

  • 作者:Zdarsky, Chip
  • 発売日: 2021/03/02
  • メディア: ペーパーバック