アメコミもぐもぐ

アメコミ好きの大学生が感想を書くブログです。

Venom by Donny Cates Vol. 3: Absolute Carnage

Venom by Donny Cates Vol. 3: Absolute Carnage (Venom (2018-)) (English Edition)

ヴェノムやスパイダーマンがカーネイジと闘っている間、静かに大人たちの帰りを待つことになったエディ・ブロックの息子ディラン・ブロックとノーマン・オズボーンの孫ノーミー。二人はカーネイジが狙っているシンビオートのコデックスをノーミーの体から摘出するため、計画に協力するアルティメット・ユニバースから来たリード・リチャーズ、通称メイカーとともに過ごすが、彼はほかのヒーローたちが帰ってくる前に帰ってくる前に実験を始めると言い出す。スパイダーマンの言いつけと話が違うと反論する子供たちとメイカーがもめている中、突然カーネイジの支配下に置かれたシンビオートたちが基地への襲撃を始めた。

当ブログでも何度も紹介しているDonny CatesのVenom誌のペーパーバック第三巻。前巻のThe Abyssの終わりが#12だったのに本作の始まりは#16と三話分が抜け落ちているように思えるけど、そこはイベント誌War of the Realmsのタイインで、担当ライターがCatesではなくCullen Bunnだったからスルーしている。今回の物語も前に紹介したAbsolute Carnageのタイインで、イベント本誌の方でヴェノムやカーネイジの物語をがっつり描いている都合で通常タイトルの方はディランに大きく焦点を当てたちょっぴり番外編っぽい話になっている。そんなこともあってかいつもより収録和数もちょっと少なめでいつもよりあっさりした雰囲気だから、イベントと合わせて読んでも胃もたれしない重さがちょうどいいかもしれない。

まずメインでアートを担当していたIban Coelloの絵の雰囲気がすごく好きだった。VenomでアートといえばAbsolute Carnage本誌も担当していたRyan Stegmanで彼もデフォルメが効いた表情が魅力だけど、Coelloの描く人の顔は日本の漫画っぽい雰囲気がして、これまたダイナミックな表情でキャラクターの感情がしっかり伝わる。特に今回活躍の場が多いディランはこの絵のおかげでカッコよさ二割増し、本作ですごく好きなキャラクターになった。結構線がはっきりめのアートだからいつもの影が濃いダークな雰囲気とはまた違うけれど、だからこそ番外編っぽい本作にはちょうどいい抜擢だったかも。機会があればまたディラン描いてほしい。

ディランといえば本作では主人公枠も務めることになっていたけど、彼の内面も今まで以上にしっかり描写されてより魅力的なキャラクターになったんじゃないかな。というのも、今までディランは基本的にエディと一緒にいるところを見てきたからどちらかといえば守られる側の印象が強かったけど、本作では怯えるノーミーを助けるために自分が盾になったり無茶な作戦で率先して前線に出たりと結構闘う側で頑張ってるのが見れたから面白かったし、先に紹介したアートのイケメンさも相まってまさに少年漫画の主人公っぽかったしすごくカッコよかった。物語全体の中でもカギとなるキャラクターみたいだからこれからもどんどんこういう活躍が見たい。あとはAbsolute Carnageでは描かれなかった、イベントの終わりのその後のエディとディランのやり取りもなかなかに感動するシーンだから、エディとの親子としてもより魅力的になったと思う。

ここまでの紹介だと本作は意外とCates作品っぽくないというか、番外編であるがゆえにいつものVenomの雰囲気とは違う作品という感じがするかもしれない。確かに第一巻のホラー演出や第二巻の叙述トリックと比べると幾分か王道寄りの物語だし、実際雰囲気はいつもと違うけれど、ここでもいつものサプライズをところどころ入れてくるのがDonny Catesというライター。手始めに突然ディランの下に現れて仲間に加わったシンビオート、スリーパーが登場したかと思えば、シンビオートの進化の法則性が明らかになり、ディランの存在にかかわる新たな謎が明かされる。ここまではまだ序の口で、終盤にはアルティメット・ユニバースのシンビオートが登場したり、メイカーと裏で共謀している黒幕の正体が明かされて絶対に予想がつかない人だったことがわかったりと怒涛のCates節ラッシュで一気にテンションが上がった。ここまでの様々な謎をどうつなげるのか、これからどんな物語を広げていくのがもう予想が全くつかない、さすがDonny Cates。これからもまだまだこのシリーズは楽しめそうだ。