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Daredevil: Parts of a Hole

Marvel Knights Daredevil by Mack & Quesada: Parts of a Hole

元恋人カレン・ペイジと死別し、虚無に打ちひしがれていたマット・マードック。気分を入れ替え再出発を図るために親友フォギーと弁護士事務所を新たに設立した彼だったが、最初の依頼人は思ってもいないタイミングで訪れた。キングピンの秘密を知るという依頼人を保護するため動き出した彼らだが、突如窓を突き破った凶弾に依頼人が倒れてしまう。

前回のGuardian Devilに引き続き、Marvel KnightsのDaredevil誌の紹介。ライターは一新してDavid Mackが務めている。彼はどちらかというと水彩画の独特なスタイルが特徴のアーティストとしての方が有名だと思うし、彼がライティングを担当している作品は割とレアな気がする。本作のカバーはすべてMack自身が担当しているから、絵の技術の一端も楽しむことが出来るだろう。アーティストは引き続きJoe Quesada。やっぱり戦闘シーンはめちゃくちゃかっこいい。この人はデアデビルとかスパイダーマンみたいな、アクロバットで闘うキャラクターのポージングがめちゃくちゃうまいからまさに大当たりな人選だ。相変わらず表情があんまり好きじゃないから、マスクオフの会話シーンとかになると途端に質が落ちるのは残念。

本作がファンの間で結構有名なのは、のちにNew Avengersなどで登場するエコーの初登場エピソードだからだと思う。最近だとホークアイのドラマにも出演が決まったんだとか。Marvelのネイティブ・アメリカンのキャラクターの中でも結構メジャーどころっていうこともあってなかなか焦点が当たるタイミングが多くなってきているから、このタイミングでオリジンを知れたのは嬉しいかな。有色人種の中でもあまり多くのヒーローがいるとは言えないけど、少し前にはエコーやニュー・ミュータンツのダニ・ムーンスターを筆頭にネイティブ・アメリカンのキャラクターたちに注目したMarvel's Voices: Indigenous Voicesなんてコミックも出てたから、今後ももっと露出の機会が増えていけばうれしいな。ただ自分が前にエコーを見たのがBendisのMoon Knightで殺されてるところだったから、初登場と死亡シーンだけまともに読んだキャラクターというなんとも言えないポジションではある。

話を戻して本作の物語について話すと、まあつまらなくもないけど特筆するほど面白いかといわれると返答に困るようなそんな作品。いいところを言えばまさしく前述したエコーというキャラクターで、幼少期に父が殺されたことがきっかけで闘いの道を選ぶというオリジンや難聴という障害を持っているなど、全体的にデアデビルと被る部分が多いのが話の肝になっている。同じ境遇に生まれ同じ悩みを抱えた彼らが心を通わせながら、すれ違いによって闘わなければならない苦しみがなんともハードに描かれているのはなかなか読みごたえがあった。これはのちのライターの仕事も大きいけど、同じくデアデビルと似たオリジンでのちにマットと恋仲になったエレクトラとも、一方は簡単に人も殺すヴィラン一歩手前、もう一方はアベンジャーだったこともあるヒーローとがっちり差別化できてるのもいいかな。

よくなかったところというと、まず時系列的な意味でのこの話のタイミング。これの一個前のGuardian Devilでカレン・ペイジが殺されてて、今ちょうどその経験が尾ひれ引いてるっていうタイミングで急に新恋人出しちゃうの、読者の気持ち的にもマットの心情描写的にもさすがにどうなの。しかも全くカレンに触れないというわけではなく、前半はしっかりマットも落ち込んでたりするから新しい女を前に急に心変わりしたように見えるし。前作がKevin Smithのライティングのおかげで死の扱いにめちゃくちゃ感動する話だったから、余計にこの話でのカレンの忘れ方が気になった。

あとはキャラクターの行動が全体的に浅いかな。前半でデアデビルを倒すための秘密兵器としてエコーを利用しマットを破滅させようとする計画をキングピンが企んでいることがわかるけど、ふたを開けてみれば単純に二人を闘わせようというだけで、特に深い陰謀ではないんだよね。近しい二人をまず仲良くさせてから闘わせようということだとは思うんだけど、それで実際マットがものすごく落ち込んだかといえばそんなことはなく、何なら途中で昔カレンが出演していたポルノを見つけた時の方がショックを受けてるような気もするくらい。Born Againなんかで見せた狡猾で隙のないキングピンと比べるとやっぱりしょぼく感じちゃうのは事実かな。

物語としては普通だけど、やっぱりエコーの初登場としては読んでおいて損はないかな。Guardian Devilと比べてもアクション多めでQuesadaの絵のかっこいいところもしっかり見れるから見ごたえもあるし結構楽しめる作品ではあるけど、もう少し物語に深みが欲しいというのが総括かな。

 

Marvel Knights Daredevil by Mack & Quesada: Parts of a Hole

Marvel Knights Daredevil by Mack & Quesada: Parts of a Hole