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X-Men by Jonathan Hickman Vol. 1

X-Men by Jonathan Hickman Vol. 1

独立国家クラコアの建国やミュータント種の死の克服によって新たな時代へと突入したX-MEN。しかしその裏では様々な敵が動き出していた。新たな反ミュータント組織オーキス、未来に出現が預言されている虐殺ロボットであるニムロッドの予兆、クラコア産の薬品に反対する植物学者集団など、差し迫る脅威にX-MENは挑み続ける。

先日紹介したHouse of X/Powers of Xの直接の続編にあたり、Jonathan HickmanのX-Men誌のランの第一巻にあたる作品が本作。HoX/PoXにて奇想天外な発想で全く新しいX-MENの物語を始めたHickmanだけど、本作でも前巻の流れを順当に拾いつつ世界観をじわじわと広げている、正統派の続編という感じだ。

アーティストは主にLeinil Francis Yuが担当している。邦訳版も出ているNew AvengersやSecret Invasionなんかを担当しているから国内でも有名なアーティストなんじゃないかな。個人的にも大好きだからずっと絵を見てられるのがすごく幸せだ。Yuの絵はとにかく綿密で、細かい線で陰影や表情、力強い筋肉を描くのが特徴。一番上に載せた本作のカバーのウルヴァリンなんて見てくださいよ、筋肉隆々で浮き出た血管までしっかり描かれていてめちゃくちゃかっこいいでしょ。ちょっとうつむきながら正面を向いてる構図もYuの絵でよく見るけど、ここにも細線で描きこんだ影がいい味を出してちょっと暗めでシリアスな表情が完成している。大きく見ても細部を見てもとにかくかっこいい絵を描くのがこのLeinil Yu。いつ見てもほれぼれするし、これがまだこのシリーズでしばらく見れると思うとワクワクが止まらないな。

話の中身の方についてなんだけど、正直最初読んだときの感想は圧倒的に地味だなという感じだった。というのも、前作HoX/PoXがミュータント種の存亡をかけた闘いにタイムスリップ要素が交わった超絶ダイナミックな話だっただけに、一人のものすごい強い敵と闘うわけでもなく細かい話を並列でいくつかのんびり続けていく本作のスタイルには少し拍子抜けしてしまった感じだったのだ。

ただ、一つ一つの話を読んでみると順当にHoX/PoXで創り上げた世界観を広げていることがわかるだろう。オーキスやニムロッドなど既出の敵はもちろん、クラコアから生まれた薬で人の平均寿命が延びたことで人類滅亡の野望を砕かれたボタニスト集団や、クラコアとアポカリプスの歴史にかかわるもう一つの生きる島アラッコの存在など、新しいX-MENの世界を活かして物語の幅をじわじわと広げているのがわかる。確かに決して派手ではないけど、複雑な世界観をしっかり描くHickmanの良さがしっかりわかる作品だと思う。

個人的に気になるのはチルドレン・オブ・ザ・ヴォールトとミスティークの話。チルドレン・オブ・ザ・ヴォールトって初耳だけど、結構前からいるキャラクターで入るらしい。遺伝子操作で強化された人類って間違いなくホモ・ノヴィッシマにつながる存在だよね。HickmanのX-Menにおけるラスボスになりそうな気がして楽しみだな。ミスティークとデスティニーの話もすごくワクワクする、というのもデスティニーがクラコアのことを知っていたとして、なんでミュータント社会を壊したがるのかが不思議だからだ。いくら自分が生き返れないといっても私情でミュータントの楽園を破壊するとは思えないし、未来視っていう能力自体が割と何でもありだからどんな風に話をいじるのか楽しみだ。

最後は紹介というより感想文みたいになっちゃったけど、とにかくワクワクさせてくれるコミックがX-Men。もうすぐ次の巻もでるけど、もう今の時点で今年読んだ中で五本の指に入る面白さだから本当に楽しい。今後大型イベントのX of Swordsも控えてるし、Hickmanのライティングにも加えてYuの絵も拝めるんだから今後も盛り上がること間違いなしだ。

 

X-Men by Jonathan Hickman Vol. 1

X-Men by Jonathan Hickman Vol. 1

  • 発売日: 2020/04/21
  • メディア: ペーパーバック