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Immortal Hulk Vol. 1: Or is He Both?

Immortal Hulk Vol. 1: Or is he Both? (Immortal Hulk (1))

とあるガソリンスタンドで起きた強盗事件がきっかけで、十二歳の少女を含む三人が命を落とした。しかしその夜、死んだはずの身元不明の遺体が安置所から消え、強盗の犯人が重体の状態で発見される。事件の目撃者はハルクがやったと証言するが、ブルース・バナーは死んでいたはずだった。

HickmanのX-MenやCatesのVenomと並んで、今Marvelで最も注目されているタイトルの一つがこのImmortal Hulk。キャラクター元来のイメージであるホラーものの怪物としてのイメージを色濃く反映した本作は連載開始からいたるところでほめられっぱなしだったが、なかなか一気に手を出す勇気がなく自分は今まで手付かずの状態だった。しかし最近行きつけのお店に前巻揃っているのを見つけてしまったので、この機会にと思い購入。しばらくは本作の紹介を続けていくと思う。

ライターはAvengers: No Surrender、Rocketなどで紹介したAl Ewing。今やGuardians of the Galaxyや大型イベントEmpyreも担当する、Marvelの顔といってもいい人物だ。キャラクターのイメージを変えて解釈しなおすと聞くと安定した雰囲気からあえて抜け出すこともあって期待半分不安半分という感じだが、Ewingに関してはRocket誌でのロケット・ラクーンの解釈がすごく刺さったから期待九割で読み始めることが出来た。

アーティストはJoe Bennett、初めて見たアーティストだったけど、ホラーっぽいテイストの絵は最高で、この一巻を読み終わるころにはこの物語に合うアーティストはこの人しかいないんじゃないかと思っちゃうくらい雰囲気がマッチしている。この次の巻には映画の遊星からの物体Xに出てくるような、すさまじい人体改造描写があるんだけど、それを見たときはすごいを通り越してもはや感動してしまった。本作のハルクのどこか今までと違う、形は似ているがどこか人間離れしたような顔もこの人の造形のおかげだと思う。#1の目玉、ハルクと対峙した強盗犯が彼を見上げる見開きと、次の見開きで犯人視点のハルクの顔のドアップが描かれるシーンはまさに圧巻で、今まで読んだコミックの中でも五本の指に入るくらいの迫力だった。

まだ物語の序盤ということもあって本作はまだ物語のコース決めという感じだけど、ホラーの雰囲気を押し出した描写は斬新で面白い。同じくMarvel現行のホラー枠といえばVenomだけど、あっちが結構勢いとノリで派手な描写や展開をやってるのに一方、Immortal Hulkは淡々と不気味な何かを見せてくる感じ。ヴェノムはもともとヴィランだしシンビオートの見た目も相まってホラーにそこまで違和感がなかったのに対して、普段ヒーローやってるキャラクターのホラー描写はなんだかいけないものを見てる感じがあってぞくぞくする。そんな高揚感が冷めないうちに、今度はガンマ線を浴びて変異した人だけが見える緑の扉や死んだはずのブルースの父親の復活など、今後につながる伏線がどんどんまかれていくから今度は雰囲気じゃなくて展開で上げに来るからずっとそわそわしながら読み切っちゃった。

何より本作に飽きないのは、各話でEwingが毎回何かしらのチャレンジをやっているからだ。新しくなったハルクを最高のインパクトとともに紹介した#1はもちろん、ブルースが謎の事件を調査するどこかサスペンスっぽい#2、ハルクが起こした事件を複数の目撃者が語り、各人の見た角度によってアーティストが変わって別々の雰囲気で一つの物語を紡ぐ#3など、物語はつながっていながらも話によっていろんなアプローチに挑戦しているから面白い。続き物ながら短編っぽい雰囲気も味わえる手腕はさすがEwingだ。

本国のサイトなんかでアメコミの情報を定期的にあさっている人なら評判を絶対に聞いたことがあるんじゃないかというくらいほめられまくってる本作だけど、一巻だけ読んでもそのポテンシャルを十分に感じれる作品だと思う。アーティストのBennettによればシリーズは#100まで続く、現状だけでペーパーバックが六冊あるからだいぶ長い道のりだけど、この面白さなら難なく読み進めていけそうだ。読もうか迷っている人はぜひ#1だけとりあえず読んでほしい、絶対にBennettの絵に夢中になるはずだ。

 

Immortal Hulk Vol. 1: Or is he Both? (Immortal Hulk (1))

Immortal Hulk Vol. 1: Or is he Both? (Immortal Hulk (1))

  • 発売日: 2018/12/04
  • メディア: ペーパーバック