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Immortal Hulk Vol. 3: Hulk in Hell

Immortal Hulk Vol. 3: Hulk in Hell (The Incredible Hulk)

ガンマ線を大量に吸収したアブゾービングマンの暴走によって謎の場所に送られてしまったヒーローたち。その場を一目見たハルクは、自分たちが地獄にいることを理解する。地獄とは何なのか、ハルクとは何なのか。様々な謎が提示される中、ハルク達は地獄脱出のために目の前の脅威と闘う。

Immortal Hulkももう三巻ということで、シリーズの雰囲気にもだいぶ慣れて物語もかなり進んできた。ライター、アーティストは引き続きAl EwingとJoe Bennettで、相変わらず質の高い物語を作り上げている。

相変わらずBennettの絵はすごいんだけど、さすがに前回で彼の魅力については十分語ったから今回はゲストで#14のアートを担当したKyle Hotzについて紹介したい。本作で彼の絵を見たときにどこか見覚えがあるなと思ってたんだけど、調べてみたらだいぶ前に紹介したVenom Unleashedに収録されていた一編、Web of Venom: Venom Unleashedを担当していたようだ。彼の絵を端的に一言でまとめるなら、気持ち悪いに尽きる。人物の表情や人体のしわや体形、陰影の濃い独特なスタイルまで、すべてが絶妙に気持ち悪い絵を作り出している。それゆえにホラーを題材にしている本作やVenom誌との相性が最高なのだ。Bennettの絵は普通の人や風景は意外ときれいで、そこに突然明らかに人間味のない不敵な笑みを浮かべるハルクや異形のクリーチャーが出るゆえの恐ろしさがあるのに対して、Hotzの絵は明らかに最初から不気味で、日常風景でさえ暗く歪んで見える感じ。どちらも魅力的だけど、ずっとBennett絵を見てきた後で少しタイプの違うHotz絵を見るとかなり新鮮でより楽しめた気がした。

物語は今までと比べてかなり進んできて、一通りのセッティングを終えてやっと本腰に入った感じ。ハルクがいきなり地獄に行くという超展開から、ハルクと悪魔、そして地獄のつながりを現実の宗教的概念や思想に基づいて紐解いていくアプローチはめちゃくちゃ面白かった。まだきちんとした答えは明かされてないけど、今後の展開にもつながりそうな謎や伏線もバンバン出てきてまさに盛り上がってきたところという印象だ。ライティングの話をすれば、これまでずっとハルクの存在の意味を語ってきた天の声的なナレーションが、最後で実は誰かの言葉だったというのが明かされるトリックが一番面白かった。Venomもそうだけど、こういうトリッキーな物語の語り方は読んでて驚きがある分やたらとテンションが上がるから好きだな。

本作を語るうえで外せないのがドク・サムソンの復活。この人そんなになじみのあるキャラクターではないけど、前に死んでたはずなのにBrian Michael BendisのCivil War Ⅱで何の説明もなく復活したって話題になってた人という印象がついている人だった。この過去作の雑な部分をうまく活かして本作では彼の復活の謎を不死のハルクと絡めて物語を引っ張っていく要素にしているからすごい展開だ。一つの世界観で以前の作品と物語がつながるからこそ、こういうめちゃくちゃな部分を後々物語のパーツにできるという意味で改めてアメコミの面白さを実感する話だった。

ただ、今回の物語自体は面白いんだけど、ちょっと複雑すぎるというのも素直な感想だ。地獄での物語では淡々と宗教的概念の説明がされるけど、元の話が難しいうえに数話にまたいで説明が続くから、説明パートになるたびに前のページに戻って内容を確認しなおしたりしないとなかなか話についていけない。今後もこの話は本筋に深くかかわってきそうだからこそ、ちょっと物語が複雑になりすぎているのは今後の不安点だ。

まだまだ続いていくImmortal Hulk、すでにここまで広げた展開が今後どうなっていくのか楽しみだ。

 

Immortal Hulk Vol. 3: Hulk in Hell (The Incredible Hulk)

Immortal Hulk Vol. 3: Hulk in Hell (The Incredible Hulk)

  • 発売日: 2019/05/28
  • メディア: ペーパーバック