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Marvel Comics #1000

Marvel Comics #1000

マーベル・ユニバースの陰で今まで暗躍し続けてきた謎の科学者集団エンクレイブと、彼らが追い続けてきた謎のアイテム、エターニティ・マスク。その存在に気づいたジミー・ウーは、ブルー・マーベルとナイト・スラッシャーと協力し、隠されてきた謎に挑む。

Marvelの八十周年を記念して発売されたのが今作Marvel Comics #1000。アメコミをがっちり読んでる方は多分ご存知だが一応説明しておくと、現在のMarvel Entertainmentは創業当時はTimely Comicsという名前で、そこからさらにAtlas Comicsを挟んで現在のMarvelに落ち着いた。Marvel ComicsというのはかつてのTimely Comicsが初めて創刊したコミック誌のタイトルで、最終的に社名もそこから取られたというわけ。もちろんMarvel Comicsは千冊も続いていないのだけど、おそらく最近DCが出したAction Comics #1000とDetective Comics #1000にあやかって名前を付けたのだろう。短編というわけもあって全部のストーリーを紹介するわけにもいかないので、今回はちょっと短めに紹介。

本作の構成はちょっと特殊で、各クリエイター陣がそれぞれ一ページずつ担当して年毎の重大な事件に焦点を当てた短編を描き、合計八十ページでMarvel全体の歴史を描いていくという進み方をしていく。その中で現在Immortal Hulkを担当して時の人となっているライター、Al Ewingが数ページを担当してエターニティ・マスクをめぐるメインのプロットを書いていき、本筋の物語をつなげていくというものだ。限られた一ページというスペースで物語を描くのは作家にとってもかなり難しい挑戦だと思うし読みごたえはどうしても少なくなってしまうが、今までMarvelで様々なコミックを担当してきた豪華な作家陣の新作がつまみ食い感覚で少しづつ読めるので、いろんな作風の物語をいっぺんに楽しめるアソート感覚の作品だ。

短編で一番印象に残ったのはデッドプールが主人公の二編。メタネタも使えてギャグに走れるキャラはこういう短編でも本領発揮しやすいのかな。バットマンが出たと話題になった話もギャグ全開にぶっ飛ばしていて面白かったし、ウェイドがインタビューに答える話もメタネタたっぷりですごく楽しめた。同じくメタなギャグ回だけど、今から遠く離れた未来でハーキュリーズが我々読者に向かって自己紹介する話も好き。ちょうどAvengers: No Road Homeでめちゃめちゃかっこいい彼を見たばかりだったからすごいギャップを感じたけど、時代によってキャラの雰囲気が移り変わったり、何人ものライターがいろんな解釈でキャラを描いた結果様々なテーマや深みが生まれるのは、アメコミの醍醐味の一つだと思う。ダース・ベイダーが主人公のスター・ウォーズの話や、Alan Mooreが執筆したことで有名なミラクルマンの物語が挿入されてるのも面白い。マーベル・ユニバースから離れた世界の物語もこうして出版社の歴史として入れてくれるのは嬉しいな。

Al Ewingによる本筋の物語はあくまで導入という感じで、ちょっと中途半端な感じは否めない。あとユニバースそのものでもある絶対的存在、エターニティの一部を使って紡いだ秘宝エターニティ・マスクの能力が相手と自分の能力を平等にするだけっていうのはちょっと弱すぎないか?せっかく記念作で出てきたアイテムなんだし、多少ぶっ壊れ性能でもよかった気がする。ここらへんの話は来月出る続編のMarvel Comics #1001やIncomingなど今後のイベントでも明かされていくみたいだから、そっちも楽しみにしていたい。

多くの作家が様々なキャラクターの物語を繋げながら長い歴史を築き上げてきたマーベル・ユニバース。そんな広大な宇宙の各所を少しずつ味わえる本作は今までコミックを読んできた我々を時に新しい世界へ誘い、また時に過去を思い返し懐かしい気持ちにさせてくれる。八十年という大きな節目を迎えた今、その物語の宇宙の多様さを改めて感じさせてくれる作品だ。

 

Marvel Comics #1000

Marvel Comics #1000