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アメコミ好きの大学生が感想を書くブログです。

Avengers: No Road Home

Avengers: No Road Home

No Surrenderでグランドマスターとチャレンジャーが引き起こしたゲームのせいで一時的に太陽から引き離されてしまった地球。事件はアベンジャーズの尽力によってひと段落したものの、光を世界が失ったと同時に今までギリシャ神話の神々によって封印されていた夜の女神ニュクスが復活。手始めに自らの子供たちを連れてオリンポスの神々を虐殺した彼女は、自身が失った闇をつかさどる力を回復し世界を再び闇と静寂に包まれたものへと変えようとする。宇宙の異常をいち早く察知したヴォイジャーアベンジャーズと再び接触し、世界の光を守るための戦いに身を投じる。

Mark WaidやAl Ewingなどによるアベンジャーズの大型イベントNo Surrenderの直接の続編という触れ込みで始まった週刊シリーズ。アベンジャーズの歴史をテーマにした前作の規模を超え、今作はMarvelの歴史すべてをテーマに物語の光の強さを描いている。実は前作No Surrenderは当ブログが初めて紹介したアメコミでもあるので、今回も紹介しないわけにはいかないなと、勝手に気合が入っております。

やっぱり大物クリエイターが集結しているだけあってか、話の勢いがかなり早くてテンポがすごくいい。前作ではアベンジャーズ、ブラック・オーダー、リーサル・レギオンが三つ巴でオブジェクトを奪い合う流れがあったけど、今作でもニュクスの闇の力を閉じ込めた三つのクリスタルを彼女とアベンジャーズが奪い合う形で話が進んでいく。こういう宝さがし系の話って個々の目的がはっきりするしやることが定まってるから話がポンポン進む印象がある。また各話ごとにそれぞれアベンジャーが一人ずつモノローグを担当したり、アベンジャーズがそれぞれ小隊にわかれて場面を変えながら各地で闘う様子を描く手法も健在。いろんな視点で話が進むし同じようなシーンが続くこともないから、結構厚い本なのに読んでいても全然飽きることがない。

本作最大の見どころはやっぱりオチ。完全に力を取り戻しもう一度世界を闇に包むべくニュクスが向かったのは、世界創造の核とされる家、ハウス・オブ・アイデアズ。宇宙全体の中心がロング・ビーチの普通の一軒家なんていう設定が奇天烈な感じがするが、どうもこの家はMarvelを創り上げた言わずと知れた大作家、Stan LeeとJack Kirbyが昔住んでいた家らしい。一つも窓がないのが印象的だけど、後々ヴィジョンがコミックのコマを窓に見立てている。おそらく、Marvelの創業当初からのポリシーであるThe World Outside Your Window、自分の家の窓から広がっている景色のようななじみ深い世界を描くということとつなげているのだろう。すべてを無に帰す闇に対抗するため、ヴィジョンは光が産む物語、すなわち今までのMarvelの歴史そのもので闘いを挑む。次々に召喚される新旧のヒーローたちや、Captain America Comics #1やMarvel Comics #1のカバーをオマージュしてニュクスと闘うページは圧巻だし、Marvelの歴史全体に敬意を払う姿勢がこれでもかと感じられる素晴らしいシーンだ。

今作の売りの一つは有名な小説シリーズ、Conan the Barbarianからコナンがマーベル・ユニバースの一部に加わることだが、ここら辺はちょっと蛇足だった気もする。自分がコナンを全く知らないこともあるのだけど、急に世界観が変わるからちょっと戸惑ったし、正直なくても話は進んだと思う。ここら辺はファンサービスだから読む人によってはうれしいのかもしれないが、やるならもっとConan the Barbarianの世界観とがっつりつなげたイベントとかで導入した方がよかったんじゃないか。

正直、アベンジャーズの魂と歴史を壮大に描き切ったNo Surrenderと比べると少し物足りない印象だが、こちらはMarvel全体の歴史をテーマにしただけあって規模はかなり壮大だし、メタなオチもひねりが利いていてかなり良かったと思う。まあ、もともと前作はとてつもない傑作だったからそう易々と超えられても困る気もするし、続編としては申し分ない出来だ。今後も続いていきそうな終わり方だったし、まだまだ同じライター陣のコミックも読みたいから続編も首を長くして待っていたい。

 

Avengers: No Road Home

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